どうも、ウオズミです。
2018年春アニメで、この世にまた新たな名作が生まれました。
『宇宙よりも遠い場所』です。
私の青春が、動き出す……!
何かを始めたいと思いながら、中々一歩を踏み出すことのできないまま高校2年生になってしまった少女・玉木マリ(たまき・まり)ことキマリは、
とあることをきっかけに南極を目指す少女・小淵沢報瀬(こぶちざわ・しらせ)と出会う。高校生が南極になんて行けるわけがないと言われても、
絶対にあきらめようとしない報瀬の姿に心を動かされたキマリは、報瀬と共に南極を目指すことを誓うのだが……。
女子高生が南極を目指すというやや奇抜な設定ながら、中身は実に王道を行く青春モノ。
笑いあり涙あり、女子高生の友情や夢を追う大人のかっこよさがこれでもかというほど全13話に詰められた一作でした。オリジナルアニメなのでテンポもいい。これほど密度の濃い1クールものはなかなかないのではないでしょうか。
長らく僕の中でのNo.1フェイバリットアニメは『かみちゅ!』だったのですが、この度10年以上ぶりに更新され、『宇宙よりも遠い場所』が僕的No.1アニメとなりました。どうでもいいですね。まあそんだけ感動したってことです。
というわけで、その感動冷めやらぬうちに全話の感想を書いていきたいと思います。
ネタバレ注意です。
ちなみに全話Amazon Primeビデオで観ました。
Prime会員だといろいろアニメ見れる他お急ぎ便無料なのでAmazonを日常的に使う人は入っておいて得しかないのでおすすめです。
興味ある人はこちらからちょろっと詳細見てみてください。
- 第1話.青春しゃくまんえん
- 第2話.歌舞伎町フリーマントル
- 第3話.フォローバックが止まらない
- 第4話.四匹のイモムシ
- 第5話.Dear my friend
- 第6話.ようこそドリアンショーへ
- 第7話.宇宙を見る船
- 第8話.吠えて、狂って、絶叫して
- 第9話.南極恋物語(ブリザード編)
- 第10話.パーシャル友情
- 第11話.ドラム缶でぶっ飛ばせ!
- 第12話.宇宙よりも遠い場所
- 第13話.きっとまた旅に出る
- その他思ったこと
- 僕も旅に出よう
第1話.青春しゃくまんえん
伝説の始まり。
いきなりキマリが泣きだしたときは大丈夫かこいつと思ったが、大丈夫だった。むしろ彼女の主人公力によってみんな救われていくわけだ、これから。
一念発起して旅に出ようとするも断念、報瀬のしゃくまんえん、南極の話、からの一気に広島へ。
このスピード感がほんとにすごい。つまらんアニメならしゃくまんえ~んのくだりくらいで1話費やすやつだ。(それにしても1話の時点ではしゃくまんえんがこんなにも重要な小道具になるとは思いもしなかった)
序盤で一度旅に出るのをあっさり諦めちゃうのと広島に向けてちゃんと旅立つところの対比、ベタながらあーほんとに何かが変わり始めてるんだなって気がしてすごく好き。
完璧な第1話ではなかろうか。この時点ですでに物語に引き込まれてしまった。
あと余談ですけど最初に早起きして家を出るシーン、一瞬チャリが横切るんですがこれ報瀬ですよね?カッパのせいで顔や髪はよく見えませんが学校ジャージ着てるし。新聞配達のバイトかなあ。
第2話.歌舞伎町フリーマントル
キマリがバイト先で日向と出会い、南極を目指す一員に日向も参加。ちなみに僕は日向が一番好き。民間観測隊の皆さん+結月も一瞬登場。
やはり何と言ってもテンポがいい。広島に着いたからもう少し広島で何かあるのかと思ったらあっという間に地元へ、そして歌舞伎町へ。
歌舞伎町を逃げ回るくだりはあまりにも爽やかで彼女らよりも10歳上の僕にはまぶしすぎました。あのきったねえ歌舞伎町をここまで爽やかに使えるのは素直にすごい。挿入歌もいい仕事しとる。
あとOPの水着シーンでも一瞬見えてたが、日向が巨乳キャラということが判明。謎の設定だ。
2話でもしゃくまんえんが活躍。キマリと報瀬が出会う単なるきっかけなもんだと思っていたが、そうではなかった。100万円でスポンサーにしてくれと大人組に頼む報瀬とそれをにべもなく突っ返すかなえ。ただ後にかなえの口から明かされる通り、この段階で南極チャレンジは相当資金繰りに苦労していたはず。100万円は大金だ。それを受け取らないのは大人の意地というやつか(まあ、100万円ぽっちで2人追加できるかって言ったら絶対足りないというのもあるとはおもうけども)
第3話.フォローバックが止まらない
「軽く死ねますね」回。
日向のルックスはそんな悪くないぞ!ただ芸能人レベルよりは低かっただけだ。とまずは言いたい。意外と傷ついている日向ぐうかわ。
個人的には報瀬のポンコツ具合が最高潮に達した回かなと。と同時に少し成長を見せる回でもあった。報瀬は周りから見たら明らか「自分が南極に行く」ことしか考えてない。それはこれまでずっと1人で頑張ってきたからってのもあるとは思うけれど、今回で少しそんな自分を省みるように。
主人公はもちろんキマリなわけだが僕としては最重要パーソンは報瀬だと思っている。そもそも報瀬がいなきゃ話が始まっていないというのもあるし、報瀬の成長とか心の持ちようの変化とかについて特に時間が割かれていたなという印象があるからだ。南極一辺倒だった報瀬がこの3話で少し変わってきた。共に同じ場所を目指すキマリや日向と出会い、徐々に絆が深まってきたことを表現していたのだろうと思う。3人を見て親友同士と勘違いした結月や『「ね」「ね」「ね」』からもそれが見える気がする。
さて3話で本格的に参戦した結月の話もしたい。物語としての結月の役割は南極行き切符兼妹キャラ兼毒舌キャラといったところか。1歳下だが小さい頃から子役として仕事をしていたことで大人びていて少し冷めているみたいな感じでキャラ紹介に書いていたが、ちょいちょい見せる年下感というか幼さみたいなのが魅力的。3人に加わったことで友達ができたねよかったねえ、と思っていたんだが実はそうではなかったようで(長くなるので10話のところで書く)。
何かのまとめかなんかで、「南極に行けるようになる経緯がご都合主義すぎて冷めた」といった趣旨のコメントを見た。結月のことを指しているんだろう。確かに努力して正規の観測隊員になるのでもなくしゃくまんえんでスポンサーになったわけでもなく、偶然出会った結月が言ってしまえば南極行きチケットになってくれたわけなのでそう思う人がいるのも仕方ないのかなと思う。
しかし僕はそうは思っていない。結月と出会ったことも、歌舞伎町まで乗り込んでいったからこそだし、最終的に結月の心を動かしたのだって、頼みを断られたのにも関わらず他意なく東京まで一緒に行こうと誘いにわざわざホテルまで来てくれたことだし。
まあどこまでをご都合主義と考えるかは人それぞれだから、そう思った人に僕は何も言えない。ただ僕はこの展開を単なるご都合主義だとは思わなかったというだけだ。
それに、確かにこの物語では結月と出会ったことが南極行きの直接の鍵となったんだけども、きっと報瀬たちは結月がいなかったとしてもどうにかして南極に行っていたに違いない。そんな気がしている。
第4話.四匹のイモムシ
さてテンポよく女子高生組4人が揃い、3話ではまだ5月だったのが一気に夏へ。
どのタイミングで結月以外の3人が正式に同行できることになったのかは定かじゃないが、それにしても親に内緒にしすぎだろう。そりゃ親も怒るわなw
4話は報瀬以外の3人も吟と顔合わせして訓練して決意を新たにって感じで非常によい回だった(毎話言ってる)。
かなえの運転で合宿に向かう車中に、「ネーミングライツ募集」のチラシが積まれていた。最初見たときは見逃していたんだけど、そーいや序盤は船のこと「しらせ」って呼んでたのにいつのまにか七神屋ペンギン饅頭号だもんな。(今更公式HP見たら予告にガッツリ書いてた、、、ちゃんと読みつつ本放送見ておけばよかったと少し後悔)
何が言いたいかというと冬に旅立つというのにまだスポンサーを探している状態という。2話で報瀬のしゃくまんえんを受け取らなかったかなえの意地がこんなところからも見える。
訓練の最中、キマリが意外とコンパサーに向いてることが判明したくだりもとても好きだ。言わずもがなキマリが4人を導く存在だということを意味しているシーン。こういう、普段は少し抜けてて周りに助けてもらうようでもいざという時は決めるみたいなある種少年マンガの王道主人公像だいすき。女子高生組が4人揃った上でこのくだりを挟むことで改めてキマリが主人公なんだと実感させられた。
第5話.Dear my friend
序盤こそ本当に心配している素振りだったが、南極行きに段々とネガティブなことしか言わなくなり、4話まではキマリと呼んでいたのにいつのまにか「お前」呼ばわりに……と数話前から徐々に闇落ちの気配を見せていためぐっちゃんだったが、キマリが旅立つ直前でついに胸中を打ち明ける。
新しい旅立ちに心配or反対する幼馴染というのはこれもまあとても王道の存在だが、最後に笑って送り出すまでがセットというのが定番だしそういう流れかと思っていたらまさかの絶交宣言。前日カラオケ行って2人で帰るときキマリが旅への思いを語るまではめぐっちゃん改心ルートまっしぐらかのように見えてたが、ここであえての変化球が待っていた。王道青春ストーリー+ちょっと捻りというこのアニメの塩梅が非常に僕にはたまらない。
報瀬と出会ってどんどん先に歩き出していくキマリを見て、これまでずっと仲良くしていたキマリが遠くに感じるというめぐっちゃんの気持ちは分からんでもないですが、まあ僕なら許せないだろう。しかしそれを許すのがキマリ。主人公力がたかい。
このアニメを見ているだけの僕らからしたらめぐっちゃんへの悪感情は相当なもんになってしまうと思うわけだが、キマリにとっては長年ずっと一緒にいた大切な友達なんだと。めぐっちゃんにも悪い面ばっかじゃないんだよ、というフォローを入れてくれたおかげで後味も悪くならずにきれいに締まった。
第6話.ようこそドリアンショーへ
日常回と見せかけた熱い回。序盤は日向と報瀬の悪い面が出ちゃってしまいやや空気悪い。報瀬は自分でも言ってる通り予定通り物事が進まないとイライラしちゃうとこ、日向は悩みやトラブルを自分ひとりで解決しようと抱え込んじゃうとこ。
海外旅行でパスポート失くすはあるあるだし、なぜ他の3人の荷物も一応確認しとかない?といったストーリーの粗はあるものの、1クールの折り返しとしていいまとまりがあったと思う。これからついに本格的に旅立つんだぜという助走を感じる話だった。
「気を遣われると本心が見えなくなる」から気を遣われたくない日向の気持ちは個人的に非常に共感できるものだし、だからこそ報瀬の「気を遣ってるんじゃなく、自分が4人で行きたいからそうする」というある種自分勝手な漢気にはとても胸が熱くなった。そしてまた活躍するしゃくまんえん。当初は自分が1人で南極に行くために1人で頑張って貯めたものだったのが、いつのまにか一緒に行く仲間のためにならバンと投げだしたって惜しくないものに。ビジネスクラスに変更してまでゲットしたチケットを持つ報瀬の清々しい顔がなんとも気持ちいい(なお数分後にまたポンコツが露呈する模様)。
あと関係ないけどはしゃぎすぎる年上3人に対して旅慣れた様子の結月がよかった。日向にいじられがちだけどあの3人だと収集つかなくなりそうな場面をまとめてくれる子なのでやっぱ4人揃ってこそだなと思った。ただ良くも悪くも優等生なのか、13話通してあまり掘り下げられなかったキャラなのが残念。今後スピンオフなどで何かエピソードあれば嬉しいのだが、この13話はこの13話としてこれ以上足すべきでないという思いもあるので複雑である。コミカライズ版ではアニメと違い報瀬視点もあるので、それと同じように結月視点、日向視点でアニメとは別口で掘り下げていってくれたらなと少し思っている。
第7話.宇宙を見る船
民間観測隊の皆さんと合流。大人組の信念にぐっとくる。自分の年齢的にどうしても大人組に感情移入してしまうのだ。大人になると色々なしがらみに囚われてチャレンジできなくなってしまう。帰ってからの生活のあてのない者もいる、という重みはなかなかくるものがあるなあ。それこそ僕にはできないチャレンジだ。
大人組の信念が垣間見える回とは言え、主役は女子高生4人。4人を中心に大人組やプロジェクトの事情を探らせることでうまく大人とJKが絡んでいたように思う。また本筋はあくまで青春や友情なので、必要以上には大人組エピソードや過去エピソードをやらずに済ませたかったというのもあるのかもしれない。もちろん大人組それぞれの事情を描いても大変面白いとは思うけれども、本編でやるには無駄になるという判断なんだろう。
また、報瀬のキャッチ―でウィットな自己紹介が素晴らしい。「お母さんを迎えに行きたい」から徐々に南極へ向かう動機が変わっていることを感じさせる言葉だった。6話での「4人で行くのが最優先」とあいまって、報瀬の成長を感じて僕は涙した。
第8話.吠えて、狂って、絶叫して
1番賛否両論ある回ではなかろうか。
取りあえず流れとしては報瀬ポンコツ死なせますヨン船酔いonestepといった感じでようやく船に乗れたねという弓子の笑顔が眩しかった。
例のシーンに対する僕の考えだが、嵐の中船の外に出るという行為は確かに危ない。僕も初めて見たときは「おいおい死ぬぞ……」とやや引いた。が、何度も見返すうちに好きになってきた。やっぱりキマリの「自分で選んだんだよ」という作中屈指の名言と『one step』の疾走感、南極が近づいているというワクワク感が勝るようになってきたのだ。まあアニメだしええやん、というメタ的なアレもある。また、大人びていて冷静ないい子ゆえにあまり自分から主張をすることが多くない結月が外に出てみたいと発言したというのも、彼女の心境の変化が表れていたのかなと感じた。他の3人に比べてやや消極的な結月がそんなハチャメチャなことを言いだしたことの意味は大きいように思う。
ここで初登場の楽曲『one step』を流したあたり、制作陣もこの場面に特別な意味を込めたのだろう。現実的に言って嵐の船外に出ることに対する批判が起こるのは分かっていたはず、それでもあえてこういうシーンを入れた心意気を買いたい。何度も見るうちにこのシーンがどんどん好きになっていく自分がいる(個人的に『one step』が一番好きな曲だというのもあるけれど)。ここが一番4人が青春してる気さえする。
ここから先、9話以降はどんどん泣ける話になっていく。一方で青春の疾走感という面に関してはスピードダウンしてしまう(もちろん仕方ないことではあるし9話以降も素晴らしいのは言うまでもない。単に描く対象が変わるだけだ)。だからこそ8話で思い切り振り切った青春感を描くためにああいったシーンにしたのではないかと僕は思う。
第9話.南極恋物語(ブリザード編)
まさかタイトルから敏夫の恋物語だとは思いもしなかった。よりもいお得意の「日常回かな?」と思わせてからの熱くて泣ける展開。
7話でも思ったけどやっぱり大人組を見ると熱いものを感じる。何度も何度も氷を割って突き進む砕氷船の姿には感動した。僕はもう、かつて持っていた「何かを成し遂げる」という夢を捨ててしがないサラリーマンやってるもんで、もう彼らの姿には泣かされる。そしてラストのざまあみろ。うん。
船から降りるときの4人一緒にってのもやっぱりいい。こういうとき最初に報瀬の背中を押してくれるのは日向なんだよなあ。いい子や。日向のそういうとこすき。そんで報瀬は報瀬で全員で一緒に、って。ほんとに成長しましたわ報瀬。もうなんか勝手に親というか兄というかそういう視点で彼女らのことを見てしまうわけだが、こういうベタなやつに弱い僕。
第10話.パーシャル友情
久々の結月回。
言ってしまえば「言葉なんてなくたって私たちもうとっくに親友じゃん!」「み、みんな……」というよくあるアレなんだが、思った以上に結月がぼっちこじらせていた。まあ確かに僕自身、めっちゃ仲良くてしょーもない雑談して笑いあえて気が合うのは間違いないんだけどかといってそいつと仕事から離れてプライベートで連絡したり遊んだりすることはありえない、みたいな距離感の同僚とか普通に職場にいるし。むしろ大人になると普段関わるのは友達よりもそういう距離感の仕事仲間の方が多くなるだろうし、芸能人として大人に接する機会の多い結月はどっちかというとその感覚を持ってしまっていたんだろうかな、とか思ったり。実際結月が船に乗ってる第一の理由は(他の3人とは違って)仕事なわけで、そうするとこれまでみんなと一緒に経験してきた数々の出来事の捉え方も1人だけ違っていたのかなーなんて考えちゃうとね、不憫な子やなとか思ってしまう。キマリが悲しくなるのも無理はないな。
とはいえ最後にはきちんと分かりあえてよかった。「ね」「ね」「ね」のやつ普通に1週目の視聴では気づかず、2週目を見てようやく気づく。みんなに混ざれてよかったよ結月。
結月が主役の3話と10話は泣くというより心温まるなあ、、、とほっこりして見れる。本人が抱えている闇が比較的軽いからというのもあるだろうし、結月が最年少だからってのもあるかもしれない。
第11話.ドラム缶でぶっ飛ばせ!
「中にはいるんだよ、高校行ってない16歳だって」2話で日向が喋った言葉ですがなかなかキツい台詞である。それ以来もちょくちょく日向が闇を抱えている様子は小出しになっていたが、11話にしてついにそこに触れられる。
もう10話のCパートから絶対何かよくないことが起きる感プンプンだったけど、やっぱり冒頭から不穏な空気。井口の「絶対なんか隠してることあるのに白々しい演技して話を逸らす」演技、実にうまい。
普段のおちゃらけた「明るく元気な日向ちゃん」の態度からは想像もつかない激昂ぶりに、日向が味わってきた苦しさが垣間見える。「集団でいるのが無理だった」と日向は自分で言っていたのだが、元々そういうのが苦手だったのかあの一件以来無理になったのか、どっちなんでしょうか。個人的には「元々そういうのがあんまり得意じゃなかったけど無理してなんとか上手いことやっていたのにあのことが起きてマジ無理になった」んではないかなと。
しかしほんと日向は誰にも闇を見せないんだ、僕が日向の立場なら南極向かう道中で自分が高校辞めた理由を少なくともあのメンバーには打ち明けてる。もしも報瀬に怒っているところを見られていなかったらどうしていたんだろうか、本番だけあいまいに話を合わせていたのか、それとも本番も体調不良とか言って不参加だったのか。どっちにしても傷が深まってたと思うのでほんと報瀬に見られててよかった。ご都合主義って言ったらそれまでだけど僕はそう思う。
この回では報瀬の優しさが沁みる。不器用なりに日向を心配する報瀬を見て、「成長したなあ……」と勝手に親心。日向にはぐらかされてもそれでも心配で、悪いことだと分かっていながらメールを盗み見る行為、僕は許します。アニメやし多少はね?
「許したらさ、楽になると思うか?」難しい問題だ。そしてその問いへの報瀬の答えが、あの大演説。友情だ。
ほんと「今更なによ」。もっとうまく立ち回る方法だってあったかもしれない。それこそ大人の対応で番組内では普通に振る舞うとか、スタッフに事情を話して日向と彼女らのパートは削るとか。でもそんなことはいいんだ。日向は誰かに助けを乞うことも許すこともしたくなかった。現実と向き合うのが怖かった。それを報瀬が救った。
前の話でも何度か書いたが躊躇う報瀬の背中を押していたのはいつも日向だった。観測隊の前でのキャッチ―でウィットな自己紹介のとき、初めて南極に降り立つとき。きっと報瀬は心の中で日向にすごく感謝していたはず。そんな私の友達を傷つけやがって!と。報瀬は敵認定してる人の前だとスイッチ入るということだが、つまりこの陸上部の連中、もう報瀬にとっても敵。もちろんキマリと結月も日向のこと心配していたのは間違いないのだが、ずっと南極南極言われて疎外されてバカにされて傷ついてきた報瀬にとってはそれ以上に他人事じゃなかったということなんだ。
薄っぺらい謝罪とか妥協した和解なんかいらない。もう日向は新しい仲間と新しい世界に踏み出しているから。熱い。安易に仲直りさせずに、主人公たちの「今」の絆の強さを描いてくれてほんとによかった。
また、基本的にこのアニメ、「泣き所」では『またね』を流す傾向にあるのだが、11話の挿入歌は『宇宙を見上げて』である。『またね』が流れたのは5話10話12話なわけだが、まあそれぞれ「またね」がある場面と違ってあんな陸上部連中と二度と会うこともないんだからまたねもクソもないってことなんだろう。この辺も地味にこだわりを感じる。『宇宙を見上げて』はどっちかというと熱い高揚感をくれる曲なんだが、この場面のこの曲はすごい泣けた。
そして、その報瀬の言葉を聞いて内陸旅行へ向かう決意をする吟。12話で報瀬が吟と話して、迷いながらも内陸行きを決めるわけですが、そのきっかけは報瀬なんだよな。上手く言葉にできないがこの2人の関係性もすごくいい。
第12話.宇宙よりも遠い場所
もはや言葉にできない。見終わったあと、しばらく動けなかった。この気持ちを「感動」という言葉で済ませてしまっていいのか、「泣いたわー」と片付けてしまっていいのか。そんくらい心揺さぶられる話だった。
内陸(貴子が消息を絶った地点)旅行に同行できることになった女子高生4人組。しかし報瀬の顔は浮かない。「私ね、南極来たら泣くんじゃないかってずっと思ってた」のくだりでその複雑な心情が語られる。
確かに南極に着いてからのことを振り返ると、到着時は「ざまーみろ!」だし、何度かキマリが「お母さんもここ来たって!よかったね報瀬ちゃん」みたいに話を振っても上の空(11話では日向のことを気にかけていたというのもあるでしょうけど)。
貴子に語りかけるモノローグもやや淡々としていて「11話で激情させたし12話は静かな感動路線かな?」と途中まで思ってた。
それでも感動的なエピソードなのは間違いないし、吟との対話で内陸旅行への同行を決意するだけでも十分に話としては完成しているし。
しかしそれで終わらなかったのがこの12話。ラスト数分で怒涛の展開が。
ここでもキマリだよ。やっぱりこの子が主人公なんやなーと改めて実感。
涙を流す吟と、どこか冷めた顔の報瀬、「このままじゃ悲しすぎる」と思ったんでしょう。ほんとーに友達想いの子たちだ。それだけで泣ける。そして出てきた貴子の、貴子の誕生日ではなく報瀬の誕生日がパスワードにされたPCである。
あのDearお母さんのメール、僕はメールそのものは送ってないもんだとばかり思ってたんだよな。ただお母さんがいないという現実を受け止めきれない報瀬の心情を表現したものだと。報瀬に辛いことやいいこと、お母さんに伝えたい何かが起こるたびにメール作成画面を開いて、そうやって心を落ち着かせる的な使い方をしていたのだと解釈しておった。現に話が進むにつれてあのメール作成画面を開く描写は減っていたし。
でも違った。報瀬はずっと送ってた。そして、一通も貴子には届いてはいなかった。
どんどん届く自分からのメールを見て、ほんとに母はもうこの世にいないのだという現実を突き付けられた報瀬の慟哭が響き、12話が終わる。
ここは本当に泣けた。素人の僕の想像なんかはるかに超えてくるストーリーと演出、花澤の演技、何もかもすごいとしか言えない。
また、一度目の視聴では気づかなかったのだが、たぶん報瀬が号泣するシーンってここが初めてなんだよな(1話のしゃくまんえん、6話の飛行機で映画見てるところはギャグなので除く笑)。9話で吟と話すシーンや11話で日向と話すシーン・ざけんなよのシーンなど、声を震わす・涙を流すというところまではたびたびあるが声を上げて泣くというのはなかった。
他のキャラだと、キマリは1話から泣いてるし他にも5話のめぐっちゃん・10話の結月。日向は11話、結月は3話と10話、というふうにけっこうガッツリ泣くシーンというのがあることに比べると、やはり意図的にこの12話まで報瀬の号泣を描かずにいたのだと思う。1話からポンコツで短気でと豊富な顔芸を繰り広げてきたので報瀬のちゃんと泣くシーンがないことにも全然違和感がなく、気づかなかった。
対比という話をもう1つすると、10話でのキマリと結月が話してたシーン。既読で返事がなくてもめぐっちゃんがどんな顔してるか分かるしつながってるとキマリが結月に語っていた。対して報瀬が母の貴子に送っていたメールは一通も読まれてすらおらず、それによって母の死という現実を突きつけられるわけだが、そうすんなり解釈できたのも10話でキマリが既読云々の話をしたおかげだと思う。10話で「絶交って言われちゃったけどつながっている」というエピソードがあったからこそ12話ラストの悲しみがさらに強調された。
そういう細かい演出を積み重ねてきた故のラストの破壊力なんでしょう。
ただただ涙を流すことしかできなかったほんとに。
EDもよかった。曲のよさもさることながら、徐々に空が暗くなり白夜の季節(すなわち4人の旅)が終わりに近づいていることを示唆しており寂しさが増幅された。
タイトルが「宇宙より遠い場所」と実質の最終話だったこの回、まさに集大成であった。
第13話.きっとまた旅に出る
12話が実質の最終話だったため、もうそれこそ帰りの飛行機が墜落して4人全員死亡とかやらない限りは成功が約束された回である。しかしだからといって無難に終わらすことなく、こちらの想像をはるかに超える見事なラストランだった。
とりあえず報瀬がさ、あんなに立派になって……髪切って貴子みたいに笑えるようになってスピーチもちゃんとできるようになってPCは吟に渡して……ほんとに報瀬は南極来れてよかったなあ。そして吟も、これまでは貴子を思って涙を流していたわけだが、最終回で報瀬のスピーチを聞いて泣くという。涙の量も心なしか多いような。「貴子の娘」としてでなく一個人として報瀬とも絆が生まれていたんだな。感動した。
その他思ったこと
他にもいろいろ思ったことがあったので書いてみたい。
個人の感想及び解釈なので、間違っていたり矛盾していても大目にみてもらえたら。
しゃくまんえんについて
今作において非常に大事な存在であったしゃくまんえん。それについてちょっと書きたいことが。報瀬はバイトで100万貯めるわけですが、友達に「バイト3年して100万ってけっこう余裕じゃね?」といった一言を言われました。もしかして同じ感想を抱いた人もいたのではないでしょうか。
しかしこれは正確じゃないと思うんです。確かに貴子が消息を絶ったのは3年前で、そこから報瀬は南極に行きたいという思いを持ち始めたのは間違いないでしょう。しかし現実的にバイトできるのって早くても高校生からじゃないですか?そう考えると、報瀬は高校2年の春には100万貯めていたので、実質1年で成し遂げたことになります。
群馬県の最低賃金は783円です。報瀬のしたバイト(レジや交通量調査など)は比較的時給の低い部類だし、高校生となるとさらに時給は下がることを考えると最低賃金に近い時給でバイトしていたと推測できます。仮に時給800円とすると1,250時間必要となり、月に104時間以上働かないと100万には届かない。「学校が終わった後の16時~20時の4時間を平日毎日+毎週土曜に5時間」でようやく100時間です。これでもまだ足りない。いかに報瀬がすべてを犠牲にしてバイト漬けの生活をしていたかお分かりいただけたでしょうか。それだけの金額なんです、100万というお金は。書いてて涙出てきたよ
これを踏まえた上で12話のしゃくまんえんを数えるシーンを見直してみてください。もう涙腺やばいでしょ?
徹底的に無駄をそぎ落としたストーリー
この話では徹底して4人の友情を描いており、それと関係ないものは極力カットしている。それが全体を通してのテンポのよさにつながったのではないか。
例えば、報瀬の父について。一体貴子はどのようにして報瀬の父となる男と出会ったのか。離婚したのか?死別か?未婚の母か?普通ならちょっとくらい語られてもいいような気もするが、本編では一貫してスルー。
他にも、吟と貴子とかなえの出会いや日向の家庭、信恵とユウくんのエピソードなんかも面白そうだ。JK4人組の出会いだってその気になれば1人あたりお2~3話使うこともできるだろうし、こんな調子で膨らましていったら余裕で2クールものにもなるだろう。それでも十分に面白い作品になるはずだ。
しかし制作陣はそれをせず、4人の友情をメインに据えてそれ以外の要素は排除した。それによって、こんなにも密度の濃い全13話の旅となったのだろう。いろいろ盛り込みたい要素もあっただろうに、これは英断だと思う。(単に1クールで終わらせなきゃいけないという制約があったのかもしれないが……笑)
対比による強調
演出面では、似た構図やセリフ・モチーフを真逆の意味合いで使う手法が多々見られた(こういう演出を指す専門用語が何かあるのかもしれないが、残念ながら素人なので知らない)。これによって、各々のシーンが更に強調されて印象深いものになったように感じられる。
1話の「1人旅に出れなかった」駅のシーンがあってこそのの「一歩踏み出して広島まで行く」旅立ちのシーンだし、5話ではキマリがめぐっちゃんを許すことで2人の絆が見えたのに対して11話では日向が陸上部の元チームメイトを許さないことで4人の絆が描かれた。
また12話のところでも書いたが、母に宛てたメールが全て未読で積み上がるシーンも、前振りとして10話でキマリが結月(&視聴者)に既読どうのこうの言っていたことで「未読=本当につながっていない」という絶望感を強調していた。メッセンジャーツールの特性を実に巧みに使った対比のさせ方だった。
僕のような素人にも理解できるシンプルで分かり易い手法だが、王道を駆け抜ける『よりもい』にはとてもマッチした演出であったと思う。
僕も旅に出よう
いろいろ思いの丈を詰め込みました。改行がおかしかったりですます調とである調が混じっていたりと非常に読みづらい文ではありますが勢いも大事かなと思って(直すのが面倒なので)そのままです。
普通に1周して、あまりの面白さにもう1周見て、友達にゴリ押しして一緒に1周一気に見て、この記事を書くのにさらに2周くらいしたので計5周は通しで見ていますし、あと酔っ払ったときとかに意味もなく12話見て号泣するっていうのも何度かしています。それでもまだ面白い。
好きすぎてOPEDのCDのみならずサントラまで買ってヘビロテ。仕事がしんどい日なんか、いつまでもこのまま彼女たちと旅をしていたい、、、と現実逃避することもしばしば。
しかしまあそんなことぐだぐだやり続けるわけにはいかんでしょう。彼女たちからもらった勇気、一歩踏み出す大切さを胸に、僕は僕の人生を歩んでいかねばならぬ。
素晴らしい作品との出会いに感謝しつつ、僕もまた旅に出ようと思います。
改めての紹介ですが、全話Amazon Primeビデオで観れます(一時期見れなくなってたけど今はまた見れるようになってます)
プライム便とプライムビデオだけでもオタクにはだいぶお得なサービスになってるのでよかったらぜひ試してみて、よりもいを何周もしてほしいです。
以上、ウオズミでした。